学生時代はよく一人旅をした。リュックサック一つを背負いあてもなく旅に出る。交通手段は殆どヒッチハイク。道路で手を上げて停まった車に乗せてもらうというやり方だ。要領が分かってくると、殆どヒッチで移動する。
ヒッチのコツは国道や県道の広い道路を避ける。なるべく車の交通量があまりない道路で手を上げる。乗用車よりトラックやバンの方が乗せてくれる確率は高い。どうしても止まらない時は、車が来たら道路の真ん中に立つ。そうすると必ず来る車は止まり乗せてくれる。そして降りた所で野宿の準備をする。テントなどは持参しないので海の家では海の家のムシロにくるまって寝た事もある。夜でムシロをよく確認しなかったので、ダニが沢山ついていて、次の日全身真っ赤になったりした。それでも体をボリボリ掻きながら旅を続けた。街の中では段ボールの箱を2、3個見つけてその底を破り、つなげて宿にする。まるでアメリカのホームレスの人達の家と同じような恰好である。
ある駅前のバス停で停まっていた時は、段ボールもなにもない。夏とはいえやはり夜は多少冷え込む。そこで駅に捨ててあった新聞紙を拾ってきて、それを1枚ずつはがし、ミイラみたいに体に巻きつけて寝た。たった新聞紙1枚でも全く寒さが違う。本当に薄い紙なのであるが、結構夜露くらいはしのげる。その姿を見た人は、ミイラがバス停で寝ているとびっくりするかもしれない。しかし安上がりで最も簡単な方法なので、野宿の時は新聞紙の世話に随分なった。
新聞紙にくるまって寝ながら考えた。世の中には、こんな風にちょっとでもあると便利な物って結構あるのではないか。ほんの少しのアイデアや優しさで、幸せにも不幸にもなることって多いのでないかと…。
最近それに気付くのが地震や台風の時の避難場所である。多くは体育館で寝泊まりすることになる。着の身着のままで逃げてきた人達は、硬い木製の床に横にならないといけない。仕切りも何もなく、プライバシーも守られない。
トイレも水が流れないので、考えられない位不潔な状態である。そこで水を飲むのを減らす。すると血栓が起こりあっという間に寝たきりになってしまうケースも多発している。
給水車の水の配給も蛇口が30㎝間隔で5個位取り付けられているので、容器を入れるスペースが狭く、5個一緒に容器には分けられない。蛇口に1mのホースでもつければ、一遍に多人数の人の給水出来るのではないだろうかといつも思う。
先日避難の際に最低限必要なモノの話をTVで観た。だいたいの目安はまず3日間をしのぐことだという。それにはまず水5L、缶詰、インスタント食品などの食料品。
食料品の他に意外に便利なのは赤ちゃんのお尻拭き。これは風呂に入れない時に重宝するという。洗面器を頭にかぶり、その上から風呂敷を被いかぶせる。そうすると落下物から頭を守ることが出来るという。それと笛。これは生き埋めになった時に居場所を知らせることが出来る。その他にも必要なモノを教えていた。いずれもちょっとした工夫で少しでも身を守ろうというものだった。
我々はいつもちょっとした工夫をすることで幸せになったり不幸せになったりする。しかし中々それに気付かず、幸せが簡単に掌から逃げていく。そして只それを見ているだけで、嘆いていることがあまりにも多すぎる。ほんの少し頭を使って生きる術をいつも身に付けて生きよう。
日本国中で天災が続いている。だから『自分の身は自分で守る』ということが今からの日本人のライフスタイルの基本になる。ちょっと悲しいことだけど…。