ちょっとした仕草で人を好きになり、とても嫌いになることもありますよね。先日離婚された方から聞いた話。「俺はどうしても我慢できない」と元主人が息まいていました。朝起きてハミガキをする時に、いつも使う度にチューブの端っこから押して使い易いようにしておくのが元主人の習慣だそうです。ところが奥さんの方は、多少大雑把な所があるのでしょう。チューブを押す所はお構いなし。
ある朝御主人がどうしても我慢出来なくなって奥さんに言ったそうです。「あのね、頼むからハミガキをする時はキチンとチューブの端っこを押して使ってくれる?せっかく朝気分良く起きてもチューブ入りハミガキがキチンとしていないと何となく気分が悪いんだ。頼むよ」。
御主人としては何気ないお願いだったのですが、それを聞いた奥さんがモーレツに怒ったそうです。
「何で朝忙しい時にそんなことまで気を回さなくちゃならないのよ。ハミガキ出来ればどんな風にチューブ入りのハミガキを置こうと関係ないでしょう。そんなことで注意されるなんて、私もうあなたとは別れる!!」。
たったチューブ入りハミガキ一つで離婚してしまったなんて本当に笑い話です。もしこれがハミガキ粉だったら、二人仲むつまじく暮らしていけたのではないか思うとチューブ入りハミガキを恨みたくなりますね。しかし考えてみるとこんなことって結構あるんじゃないでしょうか。
家庭の有る中年の男性と付き合っていたクラブのママがいた。彼はいつも美味しい店へ食事に連れて行ってくれる。時には旅行にもお忍びで出掛けてくれる。まるで俳優みたいなマスクと振る舞い。そんな彼にぞっこん惚れていたそうだ。ところがある日事件は起こった。
近くのスーパーに買物に行った時のことだ。好きな物を選び、カゴに入れ仲良くしていた時、その男があるコーナーで足を止めた。しばらくじっとそのコーナーを見ていた男は、ふっと思い出したように5本100円の歯ブラシを手にして「これは僕が払うから良いよ」と自分のカゴに入れた。その瞬間歯ブラシの向こうに家庭ある中年の男性の暮らしのニオイがして、途端にママは嫌になり、二度と会う気にもならなかったそうだ
人間、ちょっとした仕草が魅力にもなり、嫌われる原因にもなる。ところが困ったことに当の本人はそれに気が付かない。それを指摘されるまでは…。
だけどそこが又人間的で良い。チューブ入りハミガキや歯ブラシが原因で別れるなんて、他人から見たら何とバカバカしいと思うかもしれない。だけど本人達にとっては決して許せないことなのだ。やっぱり人間って不思議な動物。
因みに、我が家でもチューブ入りハミガキで一発触発になることがある。というのも、私が愛用しているのは『ホワイト&ホワイト』というチューブ入りハミガキ。30年間これを愛用している。ところがこれはロングセラーなのであるが、どこの店にでもある訳ではない。だから無くなりそうになると、20本位買い溜めするのである。そうすれば1年間位は買わなくて済む。
ところがその歯みがきチューブが無くなって家内に「新しいのは何処にあるの?」と尋ねると「あら、ごめん。それ切れているの、だからそこにある他のハミガキ使って!」と言われる。そうすると急にテンションが下がる。何せハミガキが終わった時間、朝なら、さぁ今から仕事頑張ろうというスイッチが入る。夜なら、口の中をさっぱりして今からゆっくり寝ようという気持ちが入るからだ。だが残念ながら、他のメーカーの歯みがきではそうならないのだ。
「気が利かない家内だ!」とキレそうな気持になるのを必死でこらえ「でもその他のことは一生懸命やっているから特別に許す」と大きな気持に心を入れ替えるのだ。
もし「何故無いんだ!前から無くなること分かっていたのに。メンドクセ~と買いに行かなかったんだろう。もう全くこれだから気が利かない女房を持つのは嫌だな~」なんて言おうものなら、取っ組み合いのケンカになり別れることだろう。まぁ、私の大きな心のお陰でそうならないように、上手く夫婦不仲のバランスを取っているのだ。
いずれにせよ、チューブ入りハミガキと歯ブラシには夫婦で充分気を配らないといけない。