「先生はゴルフされますか?」とよく尋ねられる。
「しますよ」と答えると、ちょっと意外な表情をされる。
どうやら仕事、エッセイ、投稿などの方が忙しくて、
ゴルフなどするタイプには見えないらしい。
ゴルフを始めたのは約35年前の27歳の時だ。
当時大分の県病院に居たのだが、
周りの産婦人科の先生がゴルフをされるので、その仲間に加わったのだ。
そうは言ってもどうしていいのか分からないので、中古のゴルフクラブセットを買い求めた。
ところが中々うまくボールに当たらない。
しかし練習していくうちに何とかボールに当たるようになった。
昭和54年に宮崎に帰り、県立宮崎病院に勤務すると『迷羊会』というゴルフコンペを毎月行っていた。
うまくはなかったが、出来るだけ参加するようにした。
その為、仕事が終わるとソソクサとゴルフ練習場の打ちっ放しに出掛け、100球位打った。
だが『ゴルフが命』という人のようにはならなかった。
まぁ付き合い程度という位だ。
中古クラブも新しいのにしようと、通販でゴルフセットを買い求めた。
それでも中々100は切れなかった。
開業して『コアラ杯』というのを年1回開催した。
これは3回位まで続いたが、仕事が忙しくてついに中止になった。
その会で一度だけホールインワンを前の組がしたのを見た事がある。
その人はバンザイと手を挙げ、次の瞬間顔色が真っ青になった。
ホールインワン保険に入っていたが、先日キャンセルしたとの事。
もし入っていれば、百万円位入るので飲めや歌えの大パーティが出来たのに…
と肩を落としながらゴルフ場を後にした。
後日、ホールインワンのお祝いの薄っぺらい手ぬぐいが送られて来ただけだった。
『GT杯』というゴルフコンペがあり、市内の産婦人科の医師達が集まり、
2カ月に1回開催される。
産婦人科医同士のゴルフコンペというのは普通のとちょっと変わっている。
エントリーしていてもお産で行けないこともある。
あるいは4人で回っていて、最初のホールで1人がお産で呼ばれ、
お昼頃もう1人が呼ばれ、午後また1人が呼ばれ、
結局4人で回ったのに1人しか最後に残らなかったとか、
最初のティーショットを打った瞬間ポケベルが鳴り、大慌てで帰った人。
産後の出血が多く、途中で脱兎のごとく走って帰られた人。
私も途中で呼ばれた事が何度もある。
幸いにゴルフ場が近く、2~30分もあれば病院に戻れるので助かっている。
つい最近までは、ボールは100円ショップで売っているのを使っていた。
ところが、これがどうもやっぱり駄目だ。1回打つと傷がつき、ボールも飛ばない。
但しティーだけは100円ショップで買う。20本位入っていて、
1本にすると5円と安いので、打った時なくしてしまう事を気にしなくて打てる。
2カ月位ごとにゴルフコンペのお誘いがあるのだが、参加出来るのはそのうち半分位だ。
夏は汗かきの為、熱中症になるので行かないし、霜が降るような寒い日も行かない。
そしてお産の人の入院がある時はもちろん出られないのだ。
下手は下手なりにゴルフを楽しもうと思う。
30年以上やっていてもスコアは100を中々切れない。
その最大の理由はゴルフボールを打つ時に、いつもプロ並みに届きもしない距離を狙ったり、
パットも一発で入れようとするからである。しかしそれでいいと思う。
ゴルフをする時にしかギャンブラーになれる時はないのだから…。
産婦人科の仕事では、絶対失敗は許されないからこそ、
ゴルフで一か八かのギャンブラーになるのが楽しいのだ。