待合室の水槽で飼っていた金魚達が次々と死に、ついに一匹も居なくなった。
暫くはそのままにしてあったが何か淋しい。そこで又金魚を買ってきて入れてみた。
すると2、3日するとバタバタと死んでいった。
こんなこと初めてなので、知人にその話をしたら「金魚って意外に飼うの難しいんですよ。
誰でも飼えると思っているかもしれないけど、すぐ死んでしまうんです。
よほど熱帯魚の方が簡単です」。えっ?本当にそうなの?と思った。
25年位前、開業した頃熱帯魚ブームがあった。通販で熱帯魚のセットを売っている。
水槽とヒーターと水草、それに砂利が入っていて、熱帯魚は毎月ビニール袋に入って送って来るという。
キャッチコピーは「熱帯魚は思ったより簡単に飼えます」そこで早速注文してみた。
すると空気がパンパン入ったビニール袋に鮮やかな色の熱帯魚が10匹位入っているものが送られてきた。
早速セットして魚を入れてみるととても綺麗だ。さすが熱帯魚、優雅に泳いでいる。心が癒される感じだ。
ところが暫くすると、次々と死んでいく。それでも何回も熱帯魚を送って来た。
寒い日にヒーターのコンセントが抜けていたりすると、水槽の中でプカプカと浮かんでしまっている。
そのうちに自分に飼う資格があるのか疑問に思い、しかも可哀想なので止めた。
さて、数か月前、自宅の金魚が死んでしまったので、家内が金魚を3匹買ってきた。
玄関の水槽に日置した水に金魚を入れた。元気そうに泳いでいたが人工水草が一つしかない。
そこでペットショップで水草を3つ買ってきた。袋を破りそのまま入れた。
これで隠れる場所が増えて良かったと思った。次の日、水槽を覗いてみると何か元気がない。
3日目に3匹とも死んだ。何故なんだろうと首を捻った。
わざわざ金魚を買ってきた家内は、機嫌が悪い。「あなたが勝手に水草なんかいれたからよ…」
と責め寄ってきた。「そんなことないだろう」と否定してその水草の袋の注意書きを読んでみた。
するとこう書いてあった。【この水草は石油製品で作られています。
表面に油や洗剤が付着しているので、使用される際は充分水洗いをしてからお使い下さい】。
そうか、袋を開ける時ホルマリンみたいなゴムの様な臭いがしていた。
それが少しずつ溶けて水中に広がっていったらしい。つまり私が金魚を殺してしまったのである。
それからもう金魚を飼う気も失せてしまった。ところが孫達がどうしても金魚が欲しいという。
ちょうどお祭りがあり、そこで金魚すくいをやっていると言う事でそこまで出掛けた。
仕掛けはモナカで作られ、針金で2本刺してある。いかにも掬えなさそうな仕掛けである。
1回300円。孫達はそれでも大喜び、絶対やりたいと言う。そこでやることにした。
しかし6歳、4歳の孫には難しい。すぐにフニャフニャになり掬えなくなってしまった。
それでも5匹金魚をプレゼントしてくれた。
孫はそれを水の入ったビニール袋に入れ、本当に嬉しそうに持って帰った。
次の日それを玄関の水槽の中に放してあげた。元気に泳ぎ始めたが、
果たして元気に育つか不安があった。もちろん水草はもう入れないことにした。
約1週間経つが、5匹ともものすごく元気良く、水槽の中で泳いでいる。
エサもほんの少量ずつ与えている。出掛ける時水槽を覗くと、何か勇気を貰えるそんな気がする。
私にとってたかが金魚、されど金魚なのだ。