先日近くのデパートで物産展があり出かけた。2000円毎に抽選券が貰え、くじ引きが出来るようになっている。美味しいものが沢山あったのでつい色々買ったら計8枚その券を貰えた。帰りにくじを引こうとその場所に行ったら長蛇の列。時間もなかったのでそのまま帰り、券をテーブルの上に置いた。すると家内が「これ抽選券よね。何故引いてこなかったの?」と私を責める。「凄く人が並んでいたから帰ってきちゃった」と答えると「あなた根性ないわね。せっかく8枚貰ったんでしょ。何か素敵な景品が当たるかもよ。並ぶといっても数分でしょ。又行ってくじ引いてきてよ」。そう言われても、雨の中をわざわざ行くのは、面倒臭いしと思っていると、そしたら「私行ってくるわ」。「えっ、抽選だけに?」。「そうよ、それが私の常識」。というとソソクサ準備して雨の中出掛けていった。

 暫くして帰ってくると開口一番「何か当たると思っていたけど何も当たらなかったわ」と言いながら引き換えにもらったティシュを机に放り投げた。「ねっ、やっぱり何も当たらなかったでしょ」と言うと、そのまま部屋に閉じこもってしまった。よほどショックだったらしい。

 ある日スーパーで買物をした。りんごやみかんなどを買い、会計を済ますと店員が「これで3枚くじが引けます」と福引券を手渡した。店をすぐ出た所に福引所があるというのでそこへノコノコと行ってみた。

 そこには係員が3人座っている。その券を渡すと「それじゃ3枚お引き下さい」とニコニコ顔で言う。おもむろに箱に手を入れ、三角のくじを引いた。「それでは開けさせていただきます」と三角クジの二カ所をハサミで切り始めた。男の係員が「ハズレです」と言う。もう一人の女の子も「残念でした」。残りのアルバイト風な女の子も「これもハズレです」と言う。ああ、三つともハズレだったかとちょっとがっかりした。

 はずれても何か粗品でも貰えるかと暫くそこに立ち尽くしていたが、何も貰えなかった。どうやら当たらないと何も貰えないらしい。ちょっとバツが悪い思いをした。せめてハズレでもティシュの一つ位貰えると何か「間」が持てるし、又買いに来ようかなという気になるとその時思った。

 その後、近くのパン屋さんに寄った。買物を終えレジに行くと、500円以上買われた方はクジを引けますと言い、ボールの入った小さな箱を差し出した。穴から手を入れボールをその箱から取り出すと、青いボールだった。すると「お客様、青いボールは当たりです。今度新発売になりましたこのパンをプレゼントします」と横に置いてあったパンを袋の中に入れてくれた。クジでははずれて、ちょっとがっかりしていた私の顔がニコニコ顔になったのは勿論のことである。

 店を出ようとすると、次のお客がやはり同じ様に手を入れボールを取り出した。そしたら青のボールである。気になってその次の人のボールを見ていたら、又もや青である。どうやらその箱の中に入っているボールは全部青らしい。なるほど新発売のパンの宣伝をするには無料で上げるよりも、ちょっとこのような仕掛けをしたら貰った方も嬉しくなると思い感心した。と同時にその前にハズレでちょっとがっかりしていた自分が何かおかしくて、クックックッと一人笑いをしながらその店を後にした。

 頂いたパンはとても美味しかった。そして心がほんわかする気分になった。又、このパン屋に行こうという気分になったのは勿論である。そう、この店の作戦勝ちである。