「あなた若く見えますネ」と人に言われたら、きっと悪い気はしないだろう。
年齢の割に若く見られているのだから、自分は若いと思われているのだと思わずほくそ笑んでしまう。確かに同窓会などでも同じ年齢なのにどこの大先輩なのだろうと思ったり、又どこの若僧なんだと思ったりすることがある。その度に「あの人老けてみえるわね…」。「あの人何故いつまでも若く見えるのかしら…」と話題にのぼる。
確かに子供が沢山いて、自分の身なりまで手が回らず老いて見えることもあるかもしれない。あるいは独身で今から婚活しなくてはならないので、なるべく若く見えるように努力している人もいるだろう。しかし言えるのは、いずれにせよ中身は同じ年齢の人だということである。
女性は色々な化粧品や着る物で年齢より若く見せることが出来るのに対し、男性はそんな術もなくどちらかというと老けて見える人の方が多いような気がする。
私の場合の若く見られる工夫をお教えしよう。それは若者の格好をすることである。今の季節はTシャツにジーンズ。Tシャツはいろんな奇抜なデザインのものを着ることが多い。あるいはディズニーのキャラクターや映画のスターの柄のものを着ることにしている。特に最近は黒いTシャツを着ることが多い。なぜなら黒を着るとスリムに見えるからだ。白いのを着るとそのままお腹が出てみえるが、黒はお腹の形が分からない。
同世代の同級生と会うと柄が入った綿シャツと綿パンをはいていることが多い。何となく大人しく、目立たないようにしているのか、いつもそれが当たり前なのか分からないが、そういう出立ちで待合場所に集まる。
同級生4.5人でスナックに飲みに行くと、店の若い女の子に「この中で一番若いのは誰だと思う?」という意地悪な質問をする。みんな体をのり出して『それは俺だろう』とポーズをとる。ところが彼女からの答えが期待していたのと違うのである。「そうねぇ、みんな同じ位の年齢じゃないの!」。若い女性にとってはおじさんの年齢など別に興味なく、しかも順列をつけたりすると、若く見られる人は大喜びするが、最も老けて見える人は落ち込んでもう店に来なくなるかもしれないので、気を遣うのだ。実際皆同じ年齢なので彼女の回答は「正解」なのだ。
先日かかりつけのクリニックを受診した。リハビリ室に行くと、理学療法士が私の体を色々触りながら調子を診てくれる。すると指を背骨のずっと下の方にずらしていき「先生、先生は50代の骨をしていますね」。やった!と万歳したいような気持を抑えながら、「どうして、そう分かるの?」。「それは骨が柔らかいからです。この下の部分は50代でも充分適用しますよ」。
その後血管の老化度を調べることになった。ベッドに横になり、両手、両足の血圧を測るのだ。それで老化度が判断できるのだという待つこと5分。結果が出た。すると一枚の紙を渡された。そこに標準表があり私のデータがインプットしてあった。それを見るとABI1.30。『あなたの血管年齢は70歳です。同年齢と比べてやや硬めです』。
骨は50代と言われ喜んでいたのが、血管は70代。天国から地獄へと突き落とされた気持ちである。私の値は1.3。1.4を超えると心疾患や脳出血を起しやすくなり要注意とのこと。
「何か良い薬はありますか?」と尋ねたら、先生が紙にサラサラと書いてくれた。どんな薬なのかそれを見るとただ一言「運動療法」。なるほど納得。
楽して血管年齢を若くすることは出来ないということらしい。何事も努力が必要。それを思い知った一日だった。