おっぱいを含ませる時、お母さん方が口々に言う。「この子中々吸ってくれなくてね。もっと上手く吸ってくれれば良いのに…」他のお母さんも口々に「この子も吸い方がヘタで、すぐ諦めて寝ちゃうのよ」おっぱいの吸い方に上手い下手がある訳ではない。だがおっぱいの食べ方には随分差がある。
「おっぱいの食べ方」なんて初めて聞く話かもしれない。しかし沖縄では「おっぱいを食べさす」という表現がある。そもそもおっぱいというのは、口に含ませて飲ませるものだ。ところがおっぱいが出ないからとか、女性の社会進出の為仕事の都合で早目にミルクに切り換えるお母さん方が増えている。
おっぱいを飲むのは正確にいうと乳首を嚙んで母乳を飲んでいるのだ。その為に顎の筋肉が発達し、離乳食もスムーズに移行する事が出来る。ところが哺乳瓶で飲ませると割と簡単に一気飲みさせる事が出来る。中には哺乳瓶の穴を大きくして、たくさん飲まそうという母親もいるという。短時間でたくさんおっぱいをと、まるで母親たちの中には、授乳を工場の生産能率と同じ様に考えている不心得者もいる。
ところが母乳を食べさす事が少ない母親は、暫くするとやっかいな問題が起こってくる。それは保育園、幼稚園などでお昼寝をしている時に、口に食物が溜まっていたり、口から食物を押し込んだりしている子が増えてきたのだ。その為に誤飲して窒息事故を起こす事も多いという。
顎の発達には3段階ある。第1段階は乳児期、第2段階は乳歯の萌出が始まって、生え揃う2歳半位まで、そして第3段階は歯が生えそろって今から何でも食べようという時期である。ところが第3段階になっても、嚙んだり飲み込む事がない子が25%もいる。色々調べてみると、母乳だけを直接飲んでいた子の場合嚙んだり飲めない子が10%しかないのに、哺乳瓶だけで育てられた子の何と60%は嚙んだり飲んだりする事が出来ない。
そういう子が大きくなるとどうなるか。母乳を食べない子は顎の発育が悪くなる。その為に顎が小さくなり、歯が入りきれなくなり歯並びが悪くなる。歯だけではなくそれが目にも及んでくる。嚙む事によって目のレンズの厚みをコントロールする毛様体筋の発達が不十分になり視力の低下が起こる。そしてそれが一層進んでくると顔の表情筋にも表れ無表情になるという。
いくら心で感動していても、無表情では人生おもしろくないだろう。人生の楽しさを嚙みしめられるように、赤ちゃんには積極的におっぱいを食べさせてあげたい。