50年くらい前、東京に住んでいた頃、毎朝6時頃になると豆腐屋さんのラッパの音が聞こえ、朝が来たことを知らせてくれました。当時スーパーはあったのですが、朝10時の開店だったので、朝ご飯のお味噌汁に豆腐は間に合わなかったのでしょう。しかしそのうちスーパーの方が安く手に入るようになり、そのラッパの音も街からだんだん消えていきました。

 でも最近、豆腐を小さなトラックの荷台に積み、まるでカタツムリのようにゆっくりと走行して行く姿を目にすることがあります。そんな移動販売で売れるのだろうかと他人事ながら心配になります。豆腐を作るには手間がかかります。それだけのコストがかかるのですが、値段を上げる訳にはいきません。なぜならスーパーでは一丁50円もしません。又コンビニでも豆腐を売っています。ここでもやはり50円位です。手頃な値段です。味もまぁまぁです。

 しかし私は豆腐にはこだわりがあり、スーパーに行き色々な種類の豆腐を買い求めます。しかもなるだけ値段の高いものをです。しかしウマーいと舌をうならすものには出合えません。自分の好みもあるのかもしれませんが、感激するものはないものです。だからまぁこんなものかと諦めています。

 すると小林に「おがわ豆腐」という豆腐屋さんがあることを知りました。しかも小林から宮崎まで車で販売に来るというのです。先日たまたまその車に出合いました。

 モノを作るというのはこだわりがないとだめですが、ここの豆腐にはかなりのこだわりがありそうです。

 例えば

・豆腐作り

 その時々の釜の中の呉の様子、呉の炊き上がる蒸気の香りを嗅ぎながら、季節

 や気温、湿度に気配り、一釜一釜ゆっくりと炊き上げます。

・水

 ミネラル豊富な美味しい地下水を使用します。昔の小林市には酒蔵がいくつ

 かあり、現在はミネラルウォーターの会社がたくさんあり、水資源が豊富です。

・にがり

 天然のにがり(粗製海水塩化マグネシウム)を使用し、大豆本来の甘味を引き

 出します。日向市、製塩屋さんのにがりと伊豆大島のにがりを商品によって使

 い分けています。

・大豆

 地元の大豆品種“ふくゆたか”はたんぱく質が高く、あっさりして、しっかり

 とした硬めのお豆腐ができます。地元の大豆、ふくゆたかをべースに、豆腐に

 するには固まりにくく、たんぱく質は少なめですが、甘味、糖質の強い大豆をブレンドしています。

なるほど納得です。

 試しにいくつかの豆腐を買い求めました。値段は木綿豆腐230円。絹豆腐230円。枝豆豆腐250円。ざる豆腐550円などです。

 早速夜の食事の時に食べてみました。すると大豆の香りがして、口の中に大豆の甘味が広がります。豆腐大好き人間が思わず笑みがこぼれるのです。こんな豆腐らしい豆腐を食べたのは初めてです。おそらく夜中の2時、3時位から仕込み、大変な思いをして一つ一つ愛情をこめて手作りしている様子が目に浮かびます。

 これで私の食事の楽しみも一つ増えました。是非とも一度食べてみて下さい。やみつきになります。