私は、生来胃腸は強い方で、好き嫌いがなく何でもよく食べる。いわゆる欠食児童だった。そう、出された料理は全て食べるというのを信条としていた。ゲテモノと言われれば言われるほど、それを食べたくなる臍曲がりである。だから便秘など無縁だった。

 ところが最近便秘に悩まされている。今まで外来の患者さんが『1週間出ません』と言うのを聞いて本当にそんなことあるのだろうか。1週間も出なければそれだけで2~3kg体重は増えるのだろう。だって1日に排泄される量は約500g。1週間出なければ500×7=3500gにもなる。それにしても何でそうなるのかと他人事のように考えていた。ところが自分がそうなると便秘の辛さがよく分かる。

 TVで、排便する時は足元に20cm位の足台を置き、そこに足を置いてすると解剖学的によく出るようになると言っていたので置いてみた。それでも思うように出ない。原因は便の硬さ。まるで石のように硬い。しかも卵大位でコロコロしているのである。そこで色々な方法、例えばオリーブオイルを色々な料理にかけると良いというので、色々な種類のオリーブオイルをお豆腐の上にたっぷりかけて食べてみた。又、水分も沢山とるようにした。運動不足ではないかと思い、1日30分自転車で全力疾走してみた。野菜を沢山とると良いというので、山のような温野菜を食べてみた。それでも出ない!

 仕方ないので便秘薬を服用することにした。そうするとようやく少しずつ便秘が解消してきた。ニワトリの卵から警官が持っている警棒みたいなものがスルリと出てくる(汚い話でごめんなさい)。つい嬉しくてスマホでとって人に送りたいような気持になった。

 食べるものは人間必要なのに、出る方にはあまり興味がない。あったとしても出るものは見たくもない。出来たら早く流して自分の視野から消してしまいたい。間違って指にでもついてしまったら、必死になって何回も石けんで洗う。ついさっきまでは自分の体の中にあったものなのに、もう付き合いたくない。縁を切りたいと思うのである。

 しかし自分の便をよく見るということは大切なことなのである。人間の殆どチラ見して流しているらしい。それはやはり生まれつきの自己防衛が体の中に残っているからであろう。是非とも自分の便をしっかり見て流そう。

 さて、最近「うんこドリル」というのがベストセラーになっている。小1~小6の漢字ドリルになっていて1冊すべて「うんこ」という言葉が入っている。勉強嫌いの小学生が、目を輝かせてニコニコしながら漢字の勉強をするというから、どんな本なのか試しに買ってみた。そうすると本当に言葉通りにうんこまみれ本である。

例えば{荷}

1.かばんの{に}物を整理していたら、3年前のうんこが出てきた。

2.彼は、うんこ委員に選ばれたことを重{}に感じている。

3.{}造りをする前にうんこを済ませておきましょう。

{配}

1.先生がクラス全員のうんこを{くば}る。

2.うんこを200個手{}してください。

3.天気が心{}なので、庭のうんこを室内に入れておこう。

「うんこは腸が作る最高の芸術品」とのうたい文句である。

 小さい頃必ず一時期「うんこ」という言葉を連発する時期がある。その言葉を言うことによって親が慌てて「やめなさい!そんな言葉」と必ず言うので、又面白くて「うんこ」と叫ぶ。しかし親がだんだんその言葉に無反応になってくると、その時期もあっという間に終わってしまう。

 出来たらその時期「うんこの大切さを考えてあげたらどうだろうか。うんこは汚いものではないこと。健康のバロメーターであること。うんこを流す時「ありがとう」と言葉を添えることなどだ。そうすると、一生うんこをするという行為が生きるのにとても大切ということが分かるはずだ。

 ちなみに小学生の半数以上が、6年間に一度も学校のトイレでうんこをしたことがないという。それはトイレが暗くて汚いこと。和式で慣れていないこと。うんこをした後にそのニオイでからかわれるなどが原因とされている。その為に日本人は排便の習慣はうまく出来ないまま大きくなって苦労することになるのだという。

 小学校でうんこの勉強をするという意味でも、このドリルをうまく活用したい。うんこの大切さというのを小さい時から意識してくれたら、より健康的な日本人が将来増えてくるはずだ。