最近、寝室が別々の老夫婦カップルが増えてきて、半数近くの人はそうであるという。その理由はいくつかある。

 まず体感温度の差が段々出てくるということである。男性は暑がりなので、夏場はクーラーの設定温度を23℃位にする。だが女性の場合28℃でも寒いと感じる人がいて、お互いの体に合った室温に差があり過ぎて眠れないという。又旦那のイビキがあまりにもうるさくて眠れないというのもある。

 あるいは、見るテレビ番組の好みが変わり、見たいものを見ながら横になりたいのに、見たいのが見られないというのもある。ある夫婦はその為に寝室に小さなテレビを2台置き、お互いに好きな番組をイヤホンで聞きながら夜を過ごすという。そこまでしてと思うが、それが夫婦円満の秘訣ですよと会う度に言われる。

 最近はスマホの普及で、寝る前にメールをチェックしたり、ゲームをしたりする人も増えてきた。又寝る前に読みたい本があり、灯りを点けると眩しくて迷惑になるので、別室にしている人もいる。つまりお互い老後になれば、寝る前の時間を大切にして、ゆっくり寝たいというのが本音だろう。

 私達夫婦は結婚してからずっと夫婦別床である。というのも仕事柄いつお産があるか分からない。つまり夜中でもしょっちゅう電話がかかってくる。その度に家内が起こされては可哀想と思うので、別床にしているのだ。それもベルの音で起こさないように、出来るだけ遠い場所でお互いに夜は寝ているのだ。おかげで家内はゆっくりと眠ることが出来る。そう、私は何て家内孝行なのだろう…。

 朝、私は目覚まし時計を使わない。それは起こされるということが嫌だからである。自然に目を覚ました方が「眠った!」という気がするし、それが快眠法の一つであると信じているからである。因みにいつもは朝5時には目が覚める。だから家内が起しに来ることもない。

 しかし先日の日曜日、久しぶりにのんびりしたいとベッドで微睡んでいた。すると突然ドアが開いて家内が入ってきた。びっくりして飛び起きたら家内が一言。「あら、生きていたの!?」。そしてドアをバタンと閉め出て行った。枕元の時計を見ると8時50分。どうしてだろうと思い寝ぼけ眼で台所へ行き理由を尋ねると、「いつもあなたに8時には食事を用意しておくのに、中々起きてこないから心配になって寝室に入ったの。もし何かあったら早く見つけなくては手遅れになるかもしれないからね!」。何だ。いつもの時間に起きてこなかったので、心配してわざわざ様子を見にきてくれたのだ。ようやく突然入ってきた理由に納得した。

 それにしても「あら、生きていたの!?」というのは酷過ぎると文句を言おうと思ったが止めた。きっとそれは家内の精一杯の照れで、愛情表現だと思い直したからだ。

 もう少しウトウトと日曜日の朝に微睡んでいたかったなぁ。そう思った日曜日だった。しかし夫婦別床の場合は、確かにいつもお互い元気でいるかをきちんと確認しなくてはならないと気付かされた一日でもあった。