最近ペットが死んだことを理由に、年賀状欠礼を知らせる『喪中ハガキ』を出す人がいるという。その多くが愛犬の写真をハガキに印刷し「喪中につき年始のご挨拶は失礼させていただきます」というものだ。
人気の火付け役となったのが、ある消費者金融のチワワ犬である。ペット店であの愛くるしい大きな目で見つめられると、確かにお金を借りてでも欲しくなる気持ちは分かる。最近でも昨年行なわれた第48回CMフェスティバルのテレビ部門のグランプリは、携帯電話のCMで『ホワイト家族』シリーズだった。それは白い犬が父親役で登場するCMである。このCMのお陰でこの携帯電話会社の売り上げはずっとトップを維持している。
歴代米大統領も犬好きが多い。第31代フーバ大統領は選挙戦の時、犬と一緒の写真を配り当選したという。ワシントンで「友人を得たいなら、犬を飼え」と言ったのは第33代大統領トルーマンである。その後もケネディが『チャーリー』という名前の犬を、フォードが『リバディー』、カーターが『グリーツ』、レーガンが『ラッキー』、先代のブッシュが『ミリー』、クリントンが『バディ』、前大統領のブッシュが『バーニー』。
特にクリントンの飼っていた『バディ』は女性スキャンダルの際、大統領を一番慰めてくれた相手として有名だ。クリントンが犬を見て「ナイスバディ」と言ったかどうかは確かではないが・・・。ブッシュの今飼っている『バーニー』は、大統領らを脇役にした映画を9本も撮っている名犬だ。
米大統領というのは世界でトップの政治家である。その一声で戦争になったり、平和になったりする。世界で最も神経を使わなくてはいけない政治家である。沢山のブレーンがいても、いつその人達から裏切られるか分からない。時にはスキャンダルを仕掛けられる事もあるだろう。或いは、結果が悪ければいくら支持を受けていても奈落の底に落とされる。そんな時、官邸に帰りドアを開けた瞬間、駆け寄り飛びついてくれる犬こそは、決して自分を裏切らない戦友である。その瞬間、どんなに悩んでいても、苦しんでいても、最高に気持ちが癒されるのである。
私の友人で、結婚してなかなか子供に恵まれず、5年位して室内犬を飼った。いつでもどこでも出掛ける時は一緒で、まるで自分の子供の様な扱いだった。食べさせる時も口移しだし、着せる服は何十着とあり、寒くないよう暖房カーペットを敷き、寝る時も一緒だった。そんな愛犬が10年位して死んだ。すると愛犬を亡くしたショックから、そのうちに仲が悪くなり離婚した。昔から『子は鎹(かすがい)』と言うが、その夫婦にとってはまさに『犬は鎹』だったのである。
さて、ペットの喪中はがきには賛否両論ある。ペットがあまり好きでない人や、飼った事がない人にとっては不愉快になるかもしれない。或いは上司が受け取ったら「ふざけるな~」と怒られるかもしれない。しかしペットを飼っている人にとっては、人間と同じ扱いで見送りたいというのがある。
今のところ私には、ペットと家族が一緒に写っている年賀状は来たが、ペットの喪中はがきはまだ一通も来ていない。しかし来年位からは続々と来るのであろうか。そのうちに『犬は世につれ、世は犬につれ』という時代が来るかもしれない。