仕事柄、なかなか買い物に行けないので、通販をよく利用する。例えば『よく眠れる』と銘打った枕をいくつも買った。確かによく眠れるのであるが、しばらくするとそれでは眠れなくなり、又新しい枕を買うのである。今使っているメディカル枕はヨーロッパの病院ではよく使われていて、これは確かによく眠れる。その形が首にフィットするだけでなく、冷んやりするのである。寝る時に頭がカッカッする私(男の更年期?)は、冷やすのに今までアイスノンを使っていたのだが、この枕を使うようになり本当によく眠れるようになった。我ながら良い買い物をしたと思う。
 しかし、実際取り寄せてみたら、そんなに期待した程の品物ではなかったこともある。例えば、電子レンジで温め、浴槽に入れると朝までその温度が維持されるという品を買ったがほとんど効果がなかった。
 また、ものすごくよく飛ぶゴルフボールというのも買った。これは確かによく飛ぶ。ただしどこへ飛んでいくか分からない。うまい人が打てば確かにスコアアップになるのだが、年に2~3回しかゴルフをしない私にとって、山や林にばかり打ち込み役に立たない代物だった。
 今や、通販は我々の生活の中にすっかり定着した。深夜や早朝のテレビは、どのチャンネルにしても通販番組だらけだ。取り扱う品も健康食品、ダイエットグッズ、老化防止グッズ、清掃用品、化粧品など多彩だ。これを全部買ったらお金がいくらあっても足りないだろう。健康のためのサプリメントなんか、鮫、青汁、黒酢など沢山の種類があり、全部飲んでいたらそれだけでお腹一杯になりそうだ。
 最近、よく見かけるのがCDの通販だ。演歌からポップス、ジャズ、童謡、フォーク、ロックなどジャンルも多岐に渡る。他の通販番組の時はチャンネルをすぐ替えるのに、この時ばかりはじっと耳をすましてしまう。するとその時代にタイムスリップ出来るからだ。今までフォーク、ロック、フュージョン特集などを買ったことがある。だからこれ以上は買わないと思っていた。
 ところが先日『RADIO DAYS』というCD全集を目にした。それは1950年代から60年代のヒット曲125曲を集めたCDである。最初はあまり買う気ではなかったのだが、繰り返し流れる通販番組を何回も見ているうちに、あまりにも懐かしくてつい注文してしまった。
 4~5日すると、それが届けられた。5枚のCDに入っている曲はすべてが懐かしい曲ばかりである。私が生まれたのが1949年。50年代というと小学校5・6年生位である。当時はまだその時代に流行した曲はほとんど知らなかった。60年代に入ると、ビートルズが衝撃的なデビューを果たした。私が中学2年生の頃だ。その頃からポピュラーというものに興味を持ち、それまでに流行った曲も知りたいと思うようになった。
 年をとると若い頃をよく思い出してため息をつくというが、まさにその心境だ。あの時代は確かに輝いていた。日本そのものも高景気に沸き、貧しさから抜け出そうと皆懸命だった。決して豊かとは言えない暮しだったが、欧米の曲に耳を傾ける・・・ただそれだけで、何か心がウキウキしてリッチな気分になったものだ。そんな時代を懐かしみながらそのCDをかけていると、家内が
 「ねぇ、それいい曲ばっかり入ってるCDね。昔、深夜番組の『オールナイトニッポン』でよくこういう曲を聴いていたのよ」。
 「へぇ~、意外だね。2つも年下なのにこんな曲を聴いていたことがあるなんて・・・。この前、テレビの通販でこのCDシリーズをやっていたんで注文したんだけどね・・・」。
ちょっと照れながら、又「何でこんなのを買っちゃたの!」と怒られるのではないかと身構えていると、
 「あなた、いい買い物したわね」。
 通販を利用し始めて20年位になる。品物が手元に届く度に「何でこんなの買ったの?」といつも苦言を言っていた家内からこんな言葉が聞けるなんて予想もしなかった。
 早速、このCDをカセットテープにダビングして家内に手渡したら「ありがとう」と嬉しそうに受けとった。その言葉を聞いて、これでしばらくは通販を堂々と利用出来そうだとホクソえんだ。